
- キャンセルポリシーは、無断キャンセルや顧客とのトラブルを防ぐための明確なルール
- 消費者契約法に則った「平均的な損害の額」に基づき、業種や時期に合わせた合理的なキャンセル料を設定することが重要
- キャンセルポリシーの設定と併せて、事前決済やリマインドメール機能のある「予約管理システム」を活用することで、無断キャンセル防止効果が高まる
「無断キャンセルが多くて困る」「お客様との間でキャンセルトラブルが起きやすい」といったお悩みを持つ事業者様は少なくありません。キャンセルポリシーは、そうした課題を解決し、お客様に安心して予約してもらうために大切なものです。
この記事では、キャンセルポリシーの基本的な意味から、効果的な書き方、業種別の例文まで、作成に必要な情報を解説します。また、キャンセルポリシーと併用して、無断キャンセルの抑止に役立つ予約管理システムの機能もご紹介します。
キャンセルポリシーとは?
キャンセルポリシーとは、顧客の予約や購入のキャンセルに関して、事業者が定めるルールや条件です。
キャンセルポリシーには、キャンセル方法や期限、キャンセル料金などを記載します。適切なキャンセルポリシーを提示することで、顧客も事業者も安心してキャンセル取引を進めることが可能です。
また、事業者にとっては無断キャンセルによる売上への悪影響を最小限に抑えることも期待できます。
なぜキャンセルポリシーが必要なのか?
キャンセルポリシーは、事業者と顧客にとって重要なものです。キャンセル時のルールを明確にすることで、無断キャンセルなど顧客との間で起こりやすいトラブルを未然に防ぎます。ここでは、なぜキャンセルポリシーが必要なのかについて解説します。
顧客とのトラブルを避ける
キャンセル時の具体的な連絡先や手続き方法を明記することで、顧客はスムーズにキャンセル連絡を行うことができます。
顧客が事前にキャンセル費用の発生について知らされていない場合、予想外の請求に驚きや不満を抱く場合があります。予約前にキャンセルの条件や費用について明確に説明し、顧客の同意を得ることで、こうしたトラブルを予防できるでしょう。
無断キャンセルやキャンセルによる損失を防止する
キャンセルポリシーで予めキャンセル料を設定しておくと、キャンセルによる損失の一部を補填することができます。
明確なキャンセルポリシーが顧客と共有されていれば、予約を取り消す際にキャンセル料が発生することを顧客も理解できます。このキャンセル料が抑止力となり、無断キャンセルや直前のキャンセルを減らす効果も期待できるでしょう。
さらに、早めにキャンセルの連絡を受けられれば、空いた枠に別の予約を入れるなどの対応が可能になり、効率的な運営が可能になります。
キャンセルポリシーで押さえておくべきポイント
ここからは、キャンセルポリシーの具体的な設定方法を詳しく解説していきます。
キャンセル受付期間を具体的に設定する
キャンセルを受け付ける期間を明確に定義することは、トラブルを防ぐうえで非常に重要です。具体的な期間を定めることで、事業者側は空き枠の管理や売上予測がしやすくなり、顧客は判断の期限がわかるため安心して予約ができます。
キャンセルの受付期間を設定する際は、曖昧な表現を避け、日付や時間で区切るなど、誰が見ても分かりやすい設定を心がけましょう。
合理的な期間を設定する
予約の性質や業種に応じて、適切な長さに設定する必要があります。顧客がキャンセルできる時間的な余裕を与える一方で、事業者の運営に支障をきたさないようバランスを保つことが重要です。
業種やサービスの特性に合わせる
業種や提供するサービスによってキャンセルの影響度は異なるため、それらを考慮した期間を設定します。同じ業種であっても、提供するプランや利用料金によって期間を調整するなど、個々のサービスに最適な期間を見極めることが重要です。
業種 | 傾向 |
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飲食店(特にコース料理) |
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宿泊施設 |
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美容院・サロン |
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特定継続的役務提供※ |
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※特定のサービス(役務)を、長期にわたって継続的に提供し、それに対して高額な料金を受け取る取引のこと。エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスが対象
キャンセル料金を明示する
キャンセル料金を設定する際の基準は、主に以下の点が重要になります。
消費者契約法に則った「平均的な損害の額」
最も重要なのが、日本の消費者契約法第9条1号の考え方です。これは、「事業者に生じる平均的な損害の額を超える」キャンセル料条項は、その超過部分について無効と定めるものです。
つまり、キャンセル料は、予約がキャンセルされたことによって事業者が実際に被る「平均的な損害」を合理的に算定し、その範囲内で設定する必要があります。
「平均的な損害」とは具体的に、逸失利益(本来得られるはずの利益)、準備費用(食材の仕入れ費用、人員の手配費用、場所の確保費用)、などが含まれます。
キャンセルのタイミングによる段階的な設定
キャンセル料は、キャンセルされた時期によって段階的に設定するのが一般的です。キャンセルが早ければ早いほど事業者の損害は少なく、直前や無断キャンセルになるほど損害が大きくなるためです。
一般的な例(飲食店の場合)
- 数日前までのキャンセル: 無料、または少額
- 前日キャンセル: 宿泊料金やコース料金の20%~80%程度
- 当日キャンセル(連絡あり): 宿泊料金やコース料金の50%~100%程度
- 無断キャンセル: 宿泊料金やコース料金の100%
キャンセル時の対応を記載する
実際にキャンセルが発生した場合の対応について記載しておくと、顧客は安心できるでしょう。以下のポイントがあると、キャンセル後の対応がイメージしやすくなります。
- キャンセル方法:キャンセルを受け付ける電話番号やメールアドレス、専用ウェブサイトなどの具体的な手続き方法を提示
- キャンセル料:キャンセル料の金額や計算方法、返金ポリシーなどを記載
- キャンセル料の請求方法:請求書の送付方法や支払い期限、支払い方法などを説明
不測の事態や遅刻に関する注意書きを含める
不測の事態によるキャンセルに関する注意書きも明記しましょう。感染症や自然災害などの予期せぬ要因によるキャンセル時の対応や、必要な手続きを説明します。柔軟な対応を示すことで、顧客との信頼関係を築くこともできるでしょう。
また、遅刻時の対応について明確に記載することで、顧客は適切な行動をとれ、事業者はスムーズな対応が可能になります。
遅刻する場合の対応については、以下のような内容を含めるとよいでしょう。
- 遅刻に関する連絡方法
- 遅刻の許容範囲(何分遅れまでなら受け入れるのか、何分以降は予約のキャンセルとなるかなど)
- 遅刻による費用や制約(遅刻による追加料金など)
キャンセルポリシーをわかりやすい場所に掲載する
キャンセルポリシーは、顧客が容易にアクセスできる目立つ場所に掲示することが重要です。たとえば、ウェブサイトの予約ページや受付カウンター、店内の掲示板などが考えられます。
これにより、顧客は予約前にキャンセルポリシーを確認し、キャンセルに関する条件や手続きを理解することができます。
専門家に確認する
キャンセルポリシーの作成後、法的な有効性を確認し、トラブルを避けるためには専門家への相談がとても有効です。
弁護士は法律全般の専門家として、法的リスクを詳細に判断し、万一のトラブル時の対応も可能です。一方、行政書士は契約書作成に特化しており、費用を抑えられる場合があります。
相談前には、作成したキャンセルポリシーの案、事業内容、予約・キャンセル方法、キャンセル料の考え方、懸念点などを整理しておくとスムーズです。
【業種別】キャンセルポリシーの例文
キャンセルポリシーは業界や業種、サービス内容によって異なる傾向があります。
たとえば、ホテル業界では予約の確保のため、一定期間前までのキャンセルやキャンセル料の請求が一般的です。一方、レストランなど飲食業界では、予約の前日や当日のキャンセルにも柔軟に対応することが一般的です。
また、医療機関や美容サロンなどのサービス業では、一定期間前までの変更やキャンセルを受け付けつつ、直前のキャンセルにはキャンセル料を請求することもあります。
このように、業界や業種、サービス内容によってキャンセルポリシーは異なるため、事業者は自身の業態や顧客ニーズに適したキャンセルポリシーを慎重に検討する必要があります。
それでは、イベントや美容サロンなど具体的なキャンセルポリシーの例文を見ていきましょう。
共通項目(キャンセル期限・料金、キャンセル通知方法)
まずは、業界・業種に関係なくキャンセルポリシーに盛り込むべき共通項目の例文を紹介します。
※これらはあくまで一例です。そのまま使用するのではなく、貴社のサービス内容や運用実態に合わせて内容を調整し、必ず事業者内で十分に検討・相談の上で作成してください。
キャンセル期限について
ご予約のキャンセルは、ご予約日の2日前の18時までにお願いいたします。それ以降のキャンセルや連絡なしでご来店いただけない場合は、キャンセル料が発生する可能性があります。
キャンセル料について
ご予約をキャンセルされる場合には、以下のキャンセル料が発生いたします。3日前までのキャンセルや変更は無料で承っていますので、お気軽にご連絡ください。
無断キャンセル:料金の100%
予約前日~当日のキャンセル:料金の50%
それ以前のキャンセル:無料
キャンセル通知方法
キャンセルをご希望の場合は、以下のいずれかの方法でご連絡ください。
電話番号:xx-xxxx-xxxx
メールアドレス:example@example.com
オンラインフォーム:弊社ウェブサイトの予約ページからキャンセルフォームへアクセスしてください。
キャンセルの際には、お名前、予約日時、予約番号などの詳細情報をお知らせいただきますようお願いいたします。キャンセル受付時間は営業時間内となっております。キャンセル手続きが完了すると、確認メールをお送りいたします。キャンセルに関するご不明な点やお困りのことがございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。
キャンセル料の請求方法
キャンセルが発生した場合、指定のクレジットカードにキャンセル料金を請求いたします。
なお、ご利用のクレジットカードの有効期限が切れている場合には、別のお支払い方法をご利用いただく必要がございます。
イベント・セミナー向けの例文
イベントにおけるキャンセルポリシーを考える際には、天候や災害などの予測できない状況に対する項目を考慮しましょう。イベントの中止、延期、変更などが生じた場合に、お客様に対して適切な対応策を提供できます。
また、参加者による遅刻がイベントに影響を与える場合には、遅刻の連絡方法を含めると良いでしょう。
天候や状況によるイベント変更に関して
天候やその他の予期せぬ状況により、イベント内容や日程が変更となる場合があります。変更が生じた場合は、ご予約のお客様には事前にご連絡いたします。
イベント中止や変更が発生した場合、別途振替日程や返金の手続きをご案内いたします。詳細については、イベント主催者までお問い合わせください。
遅刻される場合
遅刻される場合は、事前に当イベントの主催者までご連絡ください。
遅刻される旨をお伝えいただければ、可能な限り対応いたします。なお、遅刻された場合でも参加は可能ですが、進行によっては参加できない場合もございますので、ご了承ください。
流用可能な用途
- 工場見学
- アクティビティなどの体験
- ツアーや旅行
- 教育/研修プログラム/セミナー など
サロン・美容院向けの例文
サロンなどサービスを受けるための来店予約のキャンセルポリシーを作成する際には、キャンセル料の明確な設定をして予約を確定させること、そして、無断キャンセルや急なキャンセルなど、特別な事情に対するポリシーも考慮しておくと良いでしょう。
無断キャンセルについて
連絡なしに予約日時にご来店いただけなかった場合、無断キャンセルとみなされます。
無断キャンセルの場合は、サービス料金の全額をキャンセル料として請求させていただくことがあります。
特別な事情について
突発的な病気や災害などの特別な事情によるキャンセルについては、個別に対応させていただきます。事前にご連絡いただければ、キャンセル料を免除する場合もございます。
流用可能な用途
- エステ
- サウナ
- ジムやフィットネスクラブ
- スポーツ施設 など
ホテル・宿泊施設向けの例文
ホテルなどの宿泊施設のキャンセルポリシーを作成する際には、予期せぬ状況や特別なケースに対応するため、例外や特例の規定を含めることも検討しましょう。
災害や緊急事態によるキャンセルについて
自然災害や重大な緊急事態が発生した場合、キャンセル料を免除し、全額返金いたします。
特別な予約プランや割引に関するキャンセルについて
特別な予約プランや割引に関しては、キャンセルポリシーが異なる場合があります。詳細については、予約時に表示される条件をご確認ください。
長期滞在のキャンセルについて
7日以上の長期滞在予約の場合、予約開始日の14日前までにご連絡いただいた場合は、キャンセル料を免除いたします。それ以降のキャンセルには、キャンセル料が発生いたします。
突発的な病気や急な予定変更について
突発的な病気や急な予定変更によるキャンセルの場合、予約日の72時間前までにご連絡いただいた場合は、キャンセル料を免除いたします。ただし、72時間以内のキャンセルの場合は、キャンセル料が発生いたします。
飲食店向けの例文
飲食店などサービスを受けるための来店予約のキャンセルポリシーを作成する際には、キャンセル料の明確な設定をして予約を確定させること、そして、無断キャンセルや急なキャンセルなど、特別な事情に対するポリシーも考慮しておくと良いでしょう。
無断キャンセルについて
連絡なしに予約日時にご来店いただけなかった場合、無断キャンセルとみなされます。
無断キャンセルの場合は、サービス料金の全額をキャンセル料として請求させていただくことがあります。
特別な事情について
突発的な病気や災害などの特別な事情によるキャンセルについては、個別に対応させていただきます。事前にご連絡いただければ、キャンセル料を免除する場合もございます。
キャンセルポリシーに関するよくある疑問
キャンセル料の請求できる?
キャンセル料の請求は、法的に有効である場合と、無効となる場合があり、その判断は日本の法律に基づきます。キャンセル料の請求を法的に有効にするためには、以下の点に留意することが重要です。
キャンセルポリシーの明示と同意
キャンセルポリシーの存在、内容、キャンセル料の発生条件などを、顧客が予約時に明確に確認・同意できる状態にすること(例:オンライン予約時のチェックボックス、書面での交付、口頭での説明と確認)。
単に目立たない場所に記載しただけでは、「同意があった」と認められない可能性があります。
合理的な金額設定
消費者契約法に則り、キャンセルによって事業者が被る平均的な損害額を超えない範囲でキャンセル料を設定しましょう。業種やキャンセル時期に応じた段階的な設定が一般的です。
公平性
自然災害や感染症など、顧客の責任ではないやむを得ない事情によるキャンセルについては、キャンセル料を免除するなどの公平な配慮をすることが望ましいです。
また、予約と同時に送られる予約完了メールにもキャンセルポリシーを明記したり、リンクを設置しておくと、顧客がキャンセルポリシーを確認しやすくなります。
キャンセルポリシーはお客様にどう伝えるべき?
民法に予約に関する独立した章はありませんが、一般的には契約と解釈されることが多いです。
そのため、予約を完了(契約を終結)する前に、顧客に伝えておくことが重要です。
例えば、ウェブサイトで予約を受け付ける場合は、顧客が詳細情報を入力する前に設置しておくと良いでしょう。
キャンセルポリシーや、その他予約に関する注意事項など利用規約を明記し、「利用規約に同意する」チェックボックスを用意することで、顧客の同意を得ることができます。
キャンセル対策には予約システム活用も有効
キャンセルポリシーは、お客様に予約の重要性やキャンセルに関する規定を明示することで無断キャンセルの防止に役立ちますが、「予約管理システム」を活用することでその効果を大幅に向上させることができます。
ChoiceRESERVE(チョイスリザーブ)は、業界・業種を問わず「予約」に関する課題を抱える企業のための予約管理システムです。
ChoiceRESERVEの導入によって、無断キャンセルのリスクを大幅に軽減することが可能です。
無断キャンセル防止に役立つ予約システムの機能
ChoiceRESERVEの予約システムには、無断キャンセルを防止するための機能が多く備わっています。
予約アンケート機能
アンケート機能を使って、利用規約・プライバシーポリシー・キャンセルポリシーの同意を得ることが可能です。
「事前決済」機能
事前決済機能を利用することで、お客様に予約の確定と同時にキャンセルに対する責任を意識させ、無断キャンセルを慎重に考えるよう促すことが可能です。
「仮予約受付」機能
仮予約受付機能は、仮予約の段階で本人確認を実施することができます。事前に予約者の身元を確認することで、予約の確実性を高められるため、無駄な予約やキャンセルのリスクを減らせます。
また、予約申し込みを仮予約として受け付け、入金が確認できた時点で予約確定とすることも可能です。これにより、無断キャンセルや直前キャンセルによるロスを回避することができます。
「直前お知らせメール」機能
予約を再確認するリマインドメールをお客様に送付できます。お客様が予約をうっかり忘れていた場合でも、予約日時を思い出させることで無断キャンセルを最小限に抑えることができます。
24時間キャンセル対応で顧客満足度向上
予約システムを活用すると、お客様は営業時間に制約されることなく、24時間いつでも予約のキャンセル手続きを行えます。また、予約システムでは、キャンセルが即座に反映されるため、事業者はキャンセル待ちの顧客を管理し、予約がキャンセルされた場合に迅速に対応できます。
まとめ
キャンセルポリシーの設定は、キャンセルに関連するトラブルを回避し、売上損失を回収できるうえに、無断キャンセルの防止にも役立ちます。さらに、予約システムとの組み合わせることで、無断キャンセルのリスクを大幅に削減できます。
予約システムには、事前決済機能やリマインドメール機能など、無断キャンセルを予防できる機能が多く備わっています。また、予約・キャンセル手続きに24時間対応できるため、顧客にとっても利便性が向上します。
キャンセルポリシーの設定と予約システムの導入により、キャンセルによるトラブルを未然に防止し、スムーズな予約管理を実現しましょう。