企業でおこなわれる産業医面談は、従業員の心身の健康のためにも、会社の健康経営を実現するためにも大切な制度・取り組みです。
とはいえ産業医面談の必要性は常時必ずあるというものでもなく、不定期に発生する面談のニーズに備えて、もし急な相談があってもスムーズに日程調整をおこない、医師との面談へつなげられるような仕組みを日頃から準備しておくことが重要となるでしょう。

本記事では、産業医面談の日程調整で注意しておかなければならないことと、予約システムの活用について解説しています。

従業員へ公平な相談の場を提供できる「産業医面談」

笑顔の女医

そもそも企業でおこなわれる「産業医面談」とはどのようなものであるか、概要を解説します。

企業が選任した医師により、従業員の心身の健康をサポート

産業医面談は自社の従業員の心身の健康を管理することを目的に、企業が医師を選任しておこなう面談(面接、指導など)のことを指します。
産業医は必要な医学知識・要件などが労働安全衛生法で定められているため、それらの要件に合う医師を企業が選んだうえで、自社従業員との面談を委任します。

常時50人以上の労働者を雇用している事業者の場合には、速やかに産業医を選任し、所轄の労働基準監督署長へ届出をおこなう義務があります。労働者が50人に満たない場合は義務ではありませんが、労働者の健康障害の予防・心身の健康の保持増進といった観点で、必要に応じて産業医を選任することが推奨されています。

▼参考:
公益社団法人 東京都医師会「産業医とは」

疾患の治療をおこなうわけではない

産業医の役割としては、従業員と面談を行ったうえで就業状況や悩み、運動習慣や食生活などを聞き取り、改善のためのアドバイスやサポートをおこなうことが主となります。
疾患のある(とみられる)従業員に対して直接的な治療をおこなう役割ではないため、治療が必要な場合には別途、医療機関の受診を勧めるかたちとなります。

産業医が面談でおこなう対応としては、例えば以下のようなものがあります。

  • 通常勤務を継続して問題ないと判断された場合→改善に向けたアドバイスを従業員へおこないつつ、これまでと同じように勤務させることを企業へ提言
  • 就業の制限が必要と判断された場合→就業内容や就業時間に制限を設け、従業員の負担を軽減させることを企業へ提言
  • 休職が必要と判断された場合→一定期間の療養をとらせることを企業へ提言

産業医からの提言を受けた企業は、必要に応じて状況を改善するための適切な措置をとらなければなりません。

▼参考:
厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」

産業医面談は様々なケースで実施される

企業で産業医面談が発生するケースには、様々なものがあります。健康診断で異常が認められた従業員がいた場合や、企業が実施したストレスチェックで高ストレスという結果がみられた場合のほか、体調不良による遅刻や欠勤が著しく多い従業員がいた場合、従業員側から心身に関する相談が企業に対してあった場合にも、産業医面談がおこなわれます。

また、従業員側に不調の兆しや相談のニーズがなかった場合でも、一定時間以上の長時間労働をおこなった際などには、産業医面談を実施することが推奨されています。

性質上、不定期に発生する面談であり、柔軟な対応が求められる

様々なケースで状況に応じて発生するという産業医面談の性質上、面談は必ずしも日常的に発生するわけではありません。

企業において担当者が、産業医面談の必要性について適切に把握・管理しつつ、需要が生じた際には柔軟に、スムーズに医師との面談を実現してあげるという仕組みづくりが大切となります。

産業医面談はオンラインでもできる?

オンライン診療の様子

「医師の面談」と聞くと対面式の面談のみがイメージとして浮かぶかもしれませんが、産業医面談はオンラインでも実施できます。オンラインでおこなう場合には、いくつかの注意すべきポイントがありますので以下で要点を解説します。

尚、実施には以下のポイントをおさえたうえで、情報通信機器をもちいた面接実施について、衛生委員会などでの調査審議も必要となります。

セキュリティを確保した状況でのオンライン面談をおこなう

産業医面談では従業員の心身の健康状況、悩みなどプライバシーに深く関連する内容について話し合いがおこなわれるため、セキュリティをしっかり確保したオンライン環境を用意しておくことが求められます。

あわせて、セキュリティ面で安心できる環境であることを、相談者へ伝えることも大切です。

同席者や同時視聴者がいる場合には事前にその旨を伝える

オンライン面談に参加するメンバーとして、例えば上司や人事担当者、産業看護職の方など、医師と相談者以外の人物が参加する予定である場合には、あらかじめその旨を伝えておかなければなりません。

尚、ビデオ会議の画面に直接顔を出すのではなく傍聴するようなメンバーがいる場合にも、その旨を相談者へ伝えます。

表情や顔色、声色やしぐさなどを伺えるよう準備する

産業医面談においては、相談者からの直接的な相談内容・申告内容や事前の健康診断結果などだけでなく、相談している最中の当事者の様子や表情、しぐさなどを医師が細かく伺い知れる環境であることも大変重要です。

そのため、オンラインの場合は例えば面談当日はマスクを付けていない状況で、少なくともバストアップで映ってもらえるよう事前にお願いしておく、医師もそのようにするなどといった対応が適切です。
あわせて、通信速度・画質などの面で安定したビデオ会議環境を構築しておくことも大切となるでしょう。

明らかに重度の疲労や睡眠障害がある場合などにはオフライン面談にする

産業医面談自体はオンラインでも実施可能と定められているものの、相談者に明らかに重度な疲労がみられたり、健康被害に直結するような状況がみられた場合には、より綿密な面談を実施できるよう、産業医が判断したうえでオンラインではなく対面式の面談へ切り替える必要があります。

▼参考:
厚生労働省「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面接指導の実施について」

産業医面談の日程調整時に注意すべきこと

バツ印を出す白衣の女性

社内健康診断やストレスチェックで異常がみられた従業員がいた場合や、従業員側から希望を受けた場合には、人事担当者や総務担当者が産業医面談のための日程調整をおこなってあげる必要があります。

この日程調整の際には、以下に挙げるような点に配慮しておくことが大切です。

相談から日程調整、医師への共有までプライバシーに配慮して秘匿性を維持する

前述の、面談時のシステム面でのセキュリティを確保することと合わせて、人事担当者や総務担当者が日程調整のやりとりをおこなう際にも、相談者のプライバシーに配慮して十分に秘匿性を維持する意識をもつことが大切です。

周囲に他の従業員がいるなか口頭でやりとりをするといった対応ではなく、相談者と担当者が一対一でやりとりでき、尚且つ細かな内容まで丁寧にヒアリングできる環境を用意しておきます。

症状、細かな相談内容などを正しくヒアリングしデータを保管する

産業医面談の日程調整時には、相談者からの申告内容、事前の健康診断結果やストレスチェック結果、勤務状況などの仔細を医師へ共有する必要があります。
この際に万が一、細かな部分での聞き間違いや伝達ミスがあると、産業医の準備漏れや検討不足につながってしまうほか、従業員からの信頼を大きく失ってしまうことにもなりかねません。

そのため、既にあるデータや新たにヒアリングした状況など含め、すべての情報を正しい状態のままで医師へ渡せる仕組みを整備しておくことが大切です。

面談は強制できるわけではないことに留意する

産業医の選任は一定要件に合致する企業の義務とはなっているものの、産業医面談の実施自体は、従業員へ強制できるものではないという点に注意が必要です。
例えば日程調整中、従業員自身から何らかの理由でやはりキャンセルしたいという意思があった場合などには、面談を強制するのではなく必要に応じて対応を検討します。

産業医面談とはどのようなことであるかを説明したり、従業員にとってのメリットを理解してもらったり、時間の都合がつかないのであれば日程を再調整したりといった、段階を経た丁寧な対応が必要となるでしょう。

日程調整はすみやかにおこなう

従業員側から産業医面談を求められた場合には、遅くとも申し出から1か月以内に面談を実施しなければならないと定められています。
そのため、従業員から再調整などの要望が入らないかぎりは、すみやかに日程調整をおこない、実際の面談実施までことを運ぶ必要があります。

▼あわせて読みたい:社内の日程調整メールの文例や書き方は?調整作業の効率化にはツール活用もおすすめ| ChoiceRESERVE

産業医面談の日程調整を予約システムでおこなうメリット

聴診器とスマートフォン

本記事でここまで解説した、産業医面談を実施する際や日程調整する際の注意点を踏まえたうえで、「予約システムで産業医面談の日程調整をおこなう」ことのメリットをご紹介します。

相談者が相談内容や相談している事実を周囲に知られずに申し込みできる

予約システムでは、予約申込者がPCやスマートフォンの画面上で予約操作を完結できます。そのため相談者は周囲に知られることなく、また休憩時間や自宅からなどでも気軽に申請をおこなえます。

入力された内容をそのままデータ化し、医師に共有できる

予約システムでは、相談者が入力した内容がそのままデータとして保持されます。そのため、相談内容として間違いのない「生のデータ」をまるごと産業医へ共有可能です。相談者としても、自分が入力した内容が人事担当や総務を介した伝手ではなく直接医師に届くのだと感じられれば、安心して深い内容まで申告できるでしょう。

不定期のことで受付担当者が不慣れな場合でも、統一した案内・ヒアリングを実施できる

予約システムで日程調整の仕組みを一度構築しておくと、予約サイト上での説明表示、受付後の応答メール、後日の流れの案内などをすべて決まったかたちで自動化できます。
そのため、不定期・突発的な発生となりがちな産業医面談の日程調整であっても、担当者が混乱することなく、自動化された対応の進捗を見ながら必要な個別対応だけを落ち着いておこなうことが可能です。

症状や細かな状況の変化で起こる日程変更・キャンセルなどに対応しやすい

産業医面談は従業員にとっての義務ではないため、従業員からの日程変更やキャンセル希望に対しては、随時柔軟な対応をとってあげることが大切です。
日程調整対応やキャンセル対応、別日程の提示などをすべて自動化できる予約システムであれば、対応の柔軟性を容易に確保できます。

ストレスチェックの結果や勤怠管理など、社内の他システムで管理しているデータと連携させやすい

予約システムでは「API連携」や「CSVインポート」といった仕組みによって、事前の健康診断結果やストレスチェック結果、勤怠状況といった他システム上の既存データも連携・取り込みが容易です。
そのため、医師へ事前共有する情報として、すべてが揃った万全なデータを渡すことができます。

オンライン面談の場合、ビデオ会議への連携がしやすい

Zoom」や「Google Meet」といったオンライン会議ツールと連携できる予約システムであれば、オンラインの産業医面談の場合に「面談の予約受付→日程調整→日程確定時に、当日のためのビデオ会議URLを発行して表示」といった対応までを自動化できます。
担当者が日時を確認したりURLを発行したりといった負担を軽減でき、相談者にとっても当日はURLをクリックすればよい、という簡便性を提供できます。

産業医面談の日程調整は予約システムで確実・安全かつスピーディーに

企業にとって何より大切な資産ともいえる「従業員の身体的健康とメンタルヘルス」を守り、不安なく仕事をしてもらうためにも、いざという場合に備えた産業医面談の仕組みをしっかり構築しておくことは重要です。
産業医面談の日程調整をおこなう際には、プライバシーへの配慮、医師への間違いない情報の共有、スムーズな手続きといった様々な注意点がありますが、予約システムを導入すればこれらを業務負担なく実現できます。

産業医面談選任の義務がすでにある、従業員数が多い企業のご担当者はもとより、従業員に安心してもらえる環境を整備したいと考える企業のご担当者様はぜひ、健康診断やストレスチェックの仕組みづくりとあわせて、産業医面談のための予約システム導入をご検討ください。

▼参考:
デモサイト|ChoiceRESERVE

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