
宿泊施設や飲食店・イベント運営企業などが予約システムを作る場合、どのようなプログラミング言語を使えば良いのでしょうか。
この記事ではプログラミング言語に関する基本的な知識から、プログラミング知識不要の簡単な導入方法までを解説しています。予約システムを自社で開発したい人や、手間なく簡単に予約システムを取り入れたい人はぜひ参考にしてください。
予約システムの作り方は4種類!自社に合った方法を選ぼう
予約システムの作り方は、プログラミング以外にも、簡単に予約システムを自社サイトに導入できる方法など、さまざまあります。本記事では、予約システムの主な作り方を4種類ご紹介します。それぞれの特徴を比較し、自社に最適な選択肢を見つけるための全体像をご確認ください。
プログラミングで自社開発する
自社開発は、社内の運用に合わせて予約システムを構築できる方法です。設計から開発、保守までを完全に自社でコントロールできるので、既存のツールでは対応できないブランドイメージに合ったデザインや、独自の業務フローに合うシステムを構築できます。
例えば、社内の基幹システムと連携をさせたり、業界特有の複雑な料金体系を自動計算させたりすることが可能です。一方で、開発には数百万円以上の初期費用と数ヶ月から1年以上の期間が必要となり、完成後も継続的な保守・セキュリティ管理が欠かせません。
社内に専門のエンジニアチームを抱える企業や、オリジナルシステムを資産として残したい企業に適した選択肢と言えるでしょう。
開発会社に制作を依頼する
開発会社への制作依頼は、自社に開発リソースがない場合でも、プロの知見を活かした要件定義から開発、保守までを一任できます。これにより、自社開発と同様に業務に合わせた柔軟なカスタマイズが可能です。
オーダーメイドのシステムが手に入るという大きなメリットがある一方、自社開発と同様に開発費用と期間がかかります。また、依頼する会社の技術力や実績を見極める「会社選定」のプロセスが発生することが、自社開発と大きく異なる点です。
予算を確保でき、独自のブランドイメージを重視する企業が、理想の予約システムを実現したい場合に有効な方法となります。
クラウド型の予約システム(SaaS)を導入する
クラウド型の予約システム(SaaS)の導入は、手軽かつ迅速に高機能なシステムを運用開始できるのが特徴です。インターネット経由で提供されるサービスを利用するため、自社での開発は一切不要。サーバー管理やシステムのアップデート、セキュリティ対策も全て提供会社が行うため、専門知識がなくても安心です。
月額数千円からと安価な料金で、予約管理やオンライン決済といった高度な機能を利用できるのが最大のメリットですが、デザインや機能のカスタマイズ性には限りがあります。無料版は費用をかけずに導入できますが、機能が限定的であったり、広告表示がある場合もあるので導入前に確認しましょう。
個人事業主から中小企業まで、業種や規模を問わず利用でき、大手企業でもクラウド予約システムの導入が普及しています。自社開発や開発会社へ依頼する前に、まずはクラウド型予約システムを導入してから、要件を決める方法もあります。
WordPressのプラグインを活用する
すでにWordPressでウェブサイトを運営している場合に最適なのが、プラグインを活用する方法です。既存のサイトに、低コストで予約機能を追加できます。WordPressの管理画面からプラグインをインストールし、簡単な設定を行うだけで予約フォームなどを設置することが可能です。
自社サイトのデザインを活かしたまま予約受付ページを追加できるメリットがある一方、プラグインの機能を超える細かなカスタマイズは難しくなります。また、WordPress本体やプラグインのバージョンアップ、セキュリティ管理を自社で行う責任があります。
【プログラミング不要】簡単に導入できる予約システム
予算や制作期間を気にせずに簡単な予約システムを導入してみたい方は、プログラミングが不要な予約システムを活用するのがおすすめです。ここでは、プログラミングの知識がなくても予約システムを導入できる「クラウド型システム(SaaS)」と、「WordPressプラグイン」の2つの方法についてご紹介します。
クラウド型の予約システムサービスを利用する
クラウド型の予約システムは、予約管理に必要な機能が始めから用意されたサービスです。クラウドプロバイダー(予約システムを提供する企業)に申し込み後、すぐに利用を開始することができます。多くのクラウドプロバイダーでは、無料で試せる期間やデモサイトを用意しているので、導入前に自社の運用に合うシステムか検討することができるでしょう。
クラウド型の予約システムサービスのメリット
クラウド型予約システムのメリットは、開発コストと専門的な運用知識が不要な点です。自社開発することなく、完成された高機能なシステムを利用できるため、高額な初期費用を抑え、スピーディに導入できます。また、システムのアップデートや日々のメンテナンス、専門的なセキュリティ対策もクラウドプロバイダーに一任できることも大きなメリットです。
クラウド型の予約システムサービスを導入する時の注意点
手軽に導入できるクラウド型予約システムですが、注意すべき点もあります。まず、月額料金といったランニングコストが継続的に発生するため、自社の予算規模に合っているか事前に確認が必要です。
また、万が一のトラブルや操作に困った際に迅速な対応が受けられるよう、電話やメールなどのサポート体制が充実しているかも重要な選定ポイントです。導入後は、全スタッフがスムーズに使いこなせるよう、研修を行うなどの教育体制を整えることも必要になります。
WordPressプラグインを利用する
WordPressプラグインを利用すれば、既存のサイトに手軽に予約機能を導入できます。
導入方法も簡単で、WordPressの管理画面から目的に合った予約プラグインをインストール、有効化するだけ。
プラグインの設定画面で予約メニューや受付時間、通知メールなどを自社の運用に合わせて設定し、発行されたショートコードを予約カレンダーを表示したいページに貼り付ければ設置は完了です。公開前に必ずテスト予約を行い、動作を確認しましょう。
WordPressプラグインのメリット
WordPressプラグインの最大のメリットは手軽に導入でき、自社サイトから離脱しないで予約完了できることです。
外部サービスへ遷移することなく自社サイト内で予約が完結するため、ユーザーの離脱を防ぎ、ブランドイメージをそこないません。
WordPressプラグインを導入する時の注意点
WordPressプラグインは手軽ですが、導入には注意が必要です。設定から運用まで基本的に自力で行う必要があり、無償のものもありますが、高度な機能は有償のプラグインもあります。
設定マニュアルが英語のみの場合もあるので、サポート体制なども合わせ、事前に確認をしておきましょう。自社のスキルや求める機能のレベルを考慮し、目的に見合うプラグインかを見極めることが重要です。
プログラミングで予約システムを自作する方法と必要なスキル
デザインや機能を完全にカスタマイズしたい方向けに、プログラミングで予約システムを自作する方法を解説します。開発に必要となるフロントエンド・サーバーサイドの言語やデータベースの知識、自作ならではのメリット・デメリットもご紹介します。
フロントエンドに必要な言語(HTML/CSS/JavaScript)
「フロントエンド」とは、ウェブサイトやアプリケーションで、ユーザーが直接目にし、操作する部分のことです。
主に、ページの構造を作るHTML、デザインを整えるCSS、そして動きやデータのやり取りといった機能を実装するJavaScriptという3つの技術を用いて構築されます。
HTML(マークアップ言語)
HTMLとは、WEBページを作成(記述)するための基本中の基本となる言語です。インターネット上で公開されているサイトのほとんどは、基本的にHTMLタグを用いた記述で作られています。
HTMLには主に以下のような機能があります。
- 文字情報を記述する
- WEBページ内に画像・動画などのファイルを埋め込む
- 他ページへのリンクを貼る
- ページ内の各情報を構造化する など
HTMLは、WEB上でユーザーにアクセスしてもらう予約サイトを作るにあたって不可欠な言語です。
CSS(スタイルシート言語)
CSSとは、HTMLで記述されたWEBページ上にて文字装飾やレイアウト、サイズなどの細かなスタイル面を指定できる言語です。先述のHTMLは情報の構造を定義するために用いますが、装飾の指定にはCSSを使用します。HTMLタグを使用して構成したページを、商用利用向けの見映えの良いページにするためにもCSSは必須と言えるでしょう。
CSSは以下のHTML要素の指定が可能です。
- ウェブページが実際に表示されるときの色、サイズ・レイアウトのスタイル
- プリンタなどの機器で印刷・出力されるときの出力スタイル
- 音声でページ内容が読み上げられる際の再生スタイル など
Javascript(プログラミング言語)
Javascriptとは、ユーザーのブラウザ上で動作するプログラミング言語で、フォームの入力確認や動的な表示などに使われます。PHPがサーバー側で動作するのに対して、 Javascriptはユーザーのブラウザ上で動作します。
Javascriptはサーバー側のデータと連動しないため、軽めの処理に向いているのが特徴です。予約システム上なら、例えばユーザーが予約を確定する直前に「入力内容の再確認画面を出す」などの処理で用いられます。
サーバーサイドに必要な言語(PHP/Javaなど)
システム開発における「サーバーサイド」とは、ユーザーの目には直接触れないサーバー側で動く処理や仕組みのことです。「バックエンド」とも呼ばれます。
ユーザーが操作するフロントエンドからの要求に応じ、データの処理やデータベースとの連携などを担います。例えば、予約情報や顧客データをデータベースに保存したり、ログイン認証を行ったりする処理がこれにあたり、PHP、Java、Ruby、Pythonといった言語が主に使われます。
PHP(プログラミング言語)
PHPはプログラミング言語のひとつです。PHPを用いると、ユーザーがサイトやページにアクセスしたタイミングや条件、状況などによってページの表示内容を変えられるようになります。
PHPは以下のような動的なWEBページの生成に用いられています。
- 書き込みが増える度に内容が更新されるインターネット上の掲示板
- ショッピングサイトでの購入履歴の表示 など
予約システムでPHPを用いると、以下のような機能を持ったサイト制作が可能です。
空き状況や予約可否状況のリアルタイム表示
- 予約内容の確認画面表示
- 予約状況の再確認などに使うユーザー向けのマイページ など
Java(プログラミング言語)
Javaとは、世界中の基幹システムなどでも使われることの多い、汎用性の高いプログラミング言語です。WEBページ構築においてのプログラミングはもちろんのこと、アプリケーション制作などの分野でも多く用いられています。
OSに依存しない動作が可能で、事前コンパイルにより安定したパフォーマンスを発揮するのが特長です。
データベースの知識(SQLなど)
予約システムを構築するには、まず顧客・予約枠・予約履歴といった情報を管理するための「テーブル設計」の知識が不可欠です。
そして、それらのデータを操作する言語「SQL」の習得が求められます。特に、予約の登録(INSERT)、空き状況の確認(SELECT)、予約変更(UPDATE)、キャンセル(DELETE)は必須の命令です。複数のテーブルを連携させて必要な情報を抽出する知識も、予約管理に必要です。
柔軟なカスタマイズ性!自社で開発するメリット
自社開発の最大のメリットは、デザインや機能を自社の運用に合わせてカスタマイズできる点です。外部サービスの制約を受けない、自社開発のメリットをご紹介します。
自社の運用に合わせたデザインとカスタマイズ性
自社の業務フローやブランドイメージに合ったオリジナルのシステムを構築できます。
社内の人員配置やシステムに合わせた予約管理や、自社独自のサービス(例:特定の機材レンタルとセットの予約、指名料の自動計算など)に対応する機能をシステムに組み込むことが可能です。
また、自社のウェブサイトのデザインや世界観に沿った予約画面を作成できます。
長期的なランニングコストの削減
SaaS型(クラウド型)の予約システムで発生する月額利用料や、予約件数に応じた従量課金がありません。一度開発してしまえば、サーバー代やドメイン代といった維持費のみで運用できるため、特に大規模な事業で長期間利用する場合、トータルコストを抑えられる可能性があります。
既存システムとの柔軟な連携
すでに社内で利用している顧客管理システム(CRM)や会計ソフト、POSレジなど、他のシステムと自由にデータ連携させることが可能です。社内システムと連携することで、CSVデータをダウンロードしてデータを加工する手間が削減され、業務効率化を実現できます。
拡張性と資産価値
ビジネスの成長や変化に合わせて、必要な機能を後から追加・改修できます。特定のクラウドプロバイダーの仕様に縛られることがないため、将来的な事業拡大にも柔軟に対応可能です。また、開発したシステムは自社の資産になります。
自社で開発する場合の注意点
自社開発は、柔軟なカスタマイズ性というメリットがある一方で、大きな投資と責任を伴います。自社開発を行う上での注意点をまとめました。
高額な初期開発コストと長い開発期間
システムの要件定義、設計、開発、テストといった工程に多くの時間と人件費がかかります。
小規模なものでも数ヶ月、複雑なシステムであれば1年以上の開発期間が必要になる場合があるので、人件費がかかります。そのため、すぐに導入したい場合には向きません。
高度な専門知識と技術力が必要
予約システムの開発には、多様なスキルが不可欠です。
フロントエンド、サーバーサイド、データベースの知識の他にも、サーバーやネットワークなどインフラの技術も必要になります。これらのスキルを持つ人材の確保や育成も必要になります。
維持・管理(メンテナンス)の手間と責任
システムは「作って終わり」ではありません。継続的な保守・運用が必須です。
システムの不具合対応だけでなく、OSやブラウザ、連携サービスの仕様変更に合わせて、システムを改修しなければなりません。また、サーバーの監視や障害発生時の対応も自社でが必要になります。
セキュリティ対策の強化
予約システムは、顧客の氏名、連絡先、場合によってはクレジットカード情報といった重要な個人情報を扱います。そのため、強固なセキュリティ対策として、不正アクセスや情報漏洩などの対策が必要になります。
予約システム基本機能と設定を解説
予約システムを作るには、必要な機能を理解することが重要です。ここでは、予約システムを作成する上で、土台となる基本機能と設定項目をご紹介します。
予約管理機能
予約管理機能とは、予約を自動で受け付け、リアルタイムで空き枠の管理を行う機能です。空き枠が予約で埋まると自動的に予約受付を停止し、キャンセルで空き枠がでると自動的に予約受付を再開します。
予約管理に必要な設定は、以下の通りです。
予約メニューや予約枠の設定
予約メニューや予約枠の内容を設定できます。
- 予約の対象となるリソース
- 予約の対象となるサービスの所要時間
- 予約メニューに説明や写真、利用規約表示などを入れる
- 会員限定メニューの公開
- 講師やスタッフのシフト管理設定、予約画面への反映
- 店舗営業日、営業時間、予約受付期間、団体受付の有無、料金計算などの設定
- 規約、プライバシーポリシーの設定 など
予約の受付・管理
予約の受付や、予約管理ができます。
- ネット予約の受付
- 予約の変更、キャンセル受付
- 仮予約受付
- キャンセル待ち受付
- 予約の管理画面 など
通知・リマインダー機能
通知・リマインダー機能は、メールやLINEなどで予約者や管理者に予約内容を通知する機能です。予約時に予約日時を通知することに加え、予約日が近づくと予約確認通知を自動で配信します。
メールの自動送信
- 予約受付メール
- リマインダーメール
- キャンセル待ちユーザーへの通知メール
- サンクスメールなどの送信
メールの文章設定
- メールタイトル
- メニューごとのメール文章設定 など
顧客管理
顧客管理機能とは、予約時に取得した氏名・メールアドレス・電話番号などの予約者情報を蓄積・管理する機能です。予約時に情報を取得できても、顧客情報として蓄積されないシステムもあります。予約管理システムで顧客情報を管理したい場合は、導入前に確認するとよいでしょう。
顧客管理
- 顧客の属性設定
- 同時間帯の重複予約防止
- 顧客情報登録、変更、削除 など
顧客分析
予約システムを利用する顧客の分析や、集客のデータ管理ができます。
- 顧客データCSVダウンロード・アップロード
- タグの埋め込みによるアフィリエイト機能 など
セキュリティ対策
セキュリティ対策は、サーバ・インフラ、社内教育の他に、予約システムの機能でも必要になります。
セキュリティの強化
不正なアクセスを防ぐためのセキュリティ強化機能には、以下のようなものがあります。
- 固定IPアクセス制限
- ログインロック
- 担当者による権限分け
- 管理者ログの取得・検索
- SSL対応
- パスワード設定 など
外部サービスとの連携
外部サービスを連携することで、より予約システムを便利に使える機能もあります。
- GoogleカレンダーやSalesforceなどとの連携
- 多言語ツールと連携して予約サイトを多言語化 など
自社のサービスや顧客に合った予約システムを構築しよう
予約システムをイチから構築するには、プログラミング言語やシステムに関する知識が必要です。システム構築後もメンテナンスのための担当者が必要となるでしょう。
WordPressのプラグインやクラウド型の予約システムサービスを導入すれば、より簡単に自社サイトへ予約サイトを設置できます。自社のサービスや顧客に合った予約システムを構築すれば、既存顧客への円滑なサービス提供のほか、新規の顧客獲得も望めるでしょう。