
- オープンソースの予約システムは、ソースコードが公開されており、ライセンス費用を抑えつつ高いカスタマイズ性を実現する
- 導入にはプログラミング知識やセキュリティ対策の専門知識が必須で、サポート体制も不十分なため自己責任での運用が前提となる
- 手軽な導入や充実したサポートを求める場合は、WordPressプラグインやクラウド型予約システムも選択肢となる
オンライン予約システムは、顧客の利便性を高め、店舗や企業の予約管理を効率化するうえで重要なツールです。しかし、多機能なシステムは導入コストが気になるのではないでしょうか。
コストを抑えつつ、自社の業務に合わせて柔軟にカスタマイズしたい場合、オープンソースの予約システムが選択肢としておすすめです。
本記事では、オープンソースの予約システムの基礎知識から、導入のメリット・注意点、失敗しないための選び方までを分かりやすく解説。代表的なWordPressプラグインや、もう一つの選択肢であるクラウド型予約システムもご紹介します。
オープンソースの予約システムとは?
オープンソースの予約システムとは、ソースコード(プログラムの設計図)が一般公開されている予約システムを指します。
ソースコードが非公開の一般的なソフトウェアは、機能やデザインがあらかじめ決まっており、利用する企業が自社に合わせて最適化することが難しいです。そのため、システムに合わせて自社の運用方法を変更しなければならないケースもあります。
一方、オープンソースは、一定のライセンスルールの範囲内であれば誰でも自由に利用、改変、再配布が可能です。自社の運用やニーズに合わせて、機能を追加したり、デザインを細かく調整したりと、独自の予約システムを構築できるのが大きな特徴です。
オープンソースの予約システムを導入するメリット
オープンソースの予約システムには、主に「コスト」「カスタマイズ性」「継続性」の3つのメリットがあります。各メリットの詳細をみていきましょう。
コストを抑えられる
オープンソースソフトウェアは、基本的にライセンス費用が無料です。そのため、有料の予約システムに比べて、導入コストを大幅に抑えることができます。
ただし、サーバー代やカスタマイズ、セキュリティ管理を外部に依頼する費用などは別途発生するため、完全に無料で運用できるわけではありません。
自由度の高いカスタマイズが可能
ソースコードが公開されているため、プログラミングの知識があれば、自社のビジネスモデルやニーズに合わせて、機能やデザインを自由にカスタマイズできます。
市販のシステムでは対応できない独自の機能を追加し、他社との差別化を図ることも可能です。
長期的な利用が可能
特定のベンダー(開発企業)に依存しないため、提供元のサービス終了によるシステム利用停止のリスクが低いメリットがあります。世界中の開発者コミュニティによって常に改善・修正が行われるため、長期的な視点で安心した利用が期待できます。
オープンソース予約システムの注意点
メリットが大きい反面、オープンソースには専門的な知識や自己責任が求められる点など、導入前に必ず理解しておくべき注意点があります。それぞれの注意点を、詳しくみていきましょう。
プログラミングやITの専門知識が必要
システムの導入、カスタマイズ、そして運用中のトラブル対応には、プログラミング(PHP、JavaScriptなど)やサーバー、データベースに関する専門知識が不可欠です。
社内に対応できる人材がいない場合、導入や安定した運用のハードルが高くなる可能性があります。
サポート体制が不十分
多くのオープンソースソフトウェアは、無償で提供される代わりに、ベンダーによる公式なサポートが提供されません。問題が発生した場合、基本的に自力で解決するか、開発者コミュニティ・フォーラムなどで情報を探す必要があります。
迅速な復旧が難しい場合が多く、ビジネスの根幹に関わるシステムだとよりリスクが大きくなるでしょう。
セキュリティ対策は自己責任
オープンソースは、ソースコードが公開されているため、悪意のある攻撃者に脆弱性を発見されやすいという側面もあります。セキュリティホールを放置すれば、個人情報漏洩などの重大な事故に繋がりかねません。
そのため、最新のセキュリティパッチを適用したり、不正アクセス対策を講じたりなど、セキュリティ対策をすべて自社で行う必要があります。
ライセンス契約の確認が必要
それぞれのオープンソースには「OSSライセンス(オープンソースライセンス)」と呼ばれる利用規約があり、その内容はさまざまです。中には「商用利用の禁止」や「改変したソースコードの公開義務」など、特定の制約が課されている場合があります。
ライセンス違反をすると著作権侵害となる可能性があるため、導入前に必ず利用規約を確認しましょう。
運用コストが発生する場合がある
ソフトウェア自体は無償でも、システムを稼働させるためのサーバー費用やドメイン費用は必ず発生します。また、保守やカスタマイズを外部に委託する際の費用、従業員のトレーニング費用など、導入・運用には見えないコストが発生することがあります。
これらのトータルの費用を、事前に考慮しておくことが重要です。
オープンソースの予約システム選びで失敗しないためのポイント
導入してから後悔しないように、解説した導入時の注意点と合わせて、オープンソースの予約システム選びで失敗しないためのポイントを見ていきましょう。
目的に合った機能があるか
オープンソースのシステムは自由度が高い反面、必要な機能が備わっていない場合があります。予約システムに求める機能(オンライン決済、顧客管理、スタッフ管理、メール配信など)を事前に洗い出し、それらを実装できるシステムかどうかを確認しましょう。
セキュリティ体制は万全か
オープンソースの予約システムはセキュリティ対策が自己責任となるため、システムの脆弱性を修正するパッチが定期的に提供されているか、開発コミュニティが活発に活動しているかなどを事前に確認することが重要です。
古いバージョンのまま放置すると、サイバー攻撃のリスクが高まるため注意が必要しましょう。
サポート体制があるか
基本的にオープンソースの予約システムにはベンダーによる公式サポートはありません。しかし、有償でサポートを提供している企業や、活発なコミュニティが存在する場合もあります。
自社の中にシステム管理やプログラミングの専門知識を持つ人材がいない場合は、こうしたサポート体制が整っているかを確認しておきましょう。
予約タイプに合っているか
予約システムには、時間単位の予約、日時指定のイベント予約、スタッフ指名予約など、様々なタイプがあります。自社のサービスに合った予約タイプに対応しているシステムを選ぶことが、スムーズな運用につながります。
導入実績があるか
実際にそのオープンソース予約システムを利用している企業や個人の導入実績、コミュニティでの評判などを調べることも有効です。
どのような業種で活用されているか、どのような課題を解決できたかなどの情報を参考にすることで、自社に合うかどうかを判断する材料になります。
代表的なオープンソース予約システム「WordPressプラグイン」
「WordPress」はWebサイトやアプリの作成ができるオープンソースのソフトウェアです。世界中で利用されているオープンソースの代表的な存在といえるでしょう。専用の管理画面でテキストの入力や画像の挿入をしたり、見栄えがいいデザインのレイアウトを利用したりして簡単に記事を投稿できます。
専門的な知識がない初心者でもサイトを作れることが特徴です。
WordPressのプラグインで予約システムに対応
WordPressには機能を追加するためのプラグインが提供されており、無料のものから有料のものまで、さまざまな機能のプラグインがあります。プラグインを活用すれば、サイトに予約システムを設置することが可能です。
WordPressに導入できる予約システムのプラグイン
WordPressのプラグインで提供されている予約システムをご紹介します。
直感的な操作で簡単に設置できる「Booking Package」
初心者でも使いやすいシンプルな設計の予約システムです。美容室や宿泊施設以外にもセミナーや会議室、イベントなどさまざまな予約タイプに対応できる機能を備えています。
予約時間は分単位での設定に対応しており、柔軟なスケジュールを作成可能です。また、オンライン決済では、クレジットのほかに「PayPal」や「Stripe」での支払いも処理できます。
▼プラグイン入手はこちらから
https://ja.wordpress.org/plugins/booking-package/
マンツーマンレッスン向け「Online Lesson Booking」
WordPressの会員管理機能を利用した、タイムテーブルタイプの予約システムです。オンラインでのマンツーマンレッスンを提供するサービスに適しています。
管理者が自分でスケジュールを設定。会員はタイムテーブルをクリックして予約が可能です。予約やキャンセルの通知はEメールで届きます。予約情報はデータベースに作成されるテーブルに保存される仕組みです。
▼プラグイン入手はこちらからご確認ください
https://ja.wordpress.org/plugins/online-lesson-booking-system/
イベントタイプの予約システム「Events Manager」
1日単位や複数日のイベント登録に対応した予約システムです。イベントの場所を割り当てて、それぞれのイベントを表示できるほか、予約申請や予約状況の確認も可能。
イベントカレンダーの機能を網羅していて、フルサイズのカレンダーにはリスト形式でイベントが表示されます。小さいサイズのカレンダーは日付をクリックするとリストの表示が可能です。
▼プラグイン入手はこちらからご確認ください
https://ja.wordpress.org/plugins/events-manager/
クラウド型予約システムという選択肢も
クラウド型予約システムサービスを利用して作った予約システムを設置することもできます。
クラウド型予約システムとは?オープンソースとの違い
クラウド型予約システムとオープンソースの予約システムの違いは、「誰がシステムを管理・運用するか」という点で、大きく異なります。専門知識がなくても簡単に導入ができる一方、初期費用や月額利用料など、一定のコストが発生します。
項目 | クラウド型予約システム | オープンソースの予約システム |
---|---|---|
提供形態 | サービス(SaaS) | ソフトウェア |
運用主体・セキュリティ責任 | 提供会社 | 利用者自身 |
費用 | 初期費用、月額利用料など | ライセンス費用は基本的に無料(サーバー代などは必要 |
カスタマイズ | 制限あり | 高い自由度 |
推奨されるケース | 専門知識がなく、手軽に始めたい | 独自の機能が必要で、専門知識を持つ人材がいる |
脆弱性対応 | サービス提供事業者が行う | パッチの適用、アップデートを手動で行う |
必要な知識・人員 | 専門知識は不要(一部設定を除く) | プログラミングやセキュリティの専門家が必須 |
クラウド型予約システムはWordPressなしでも利用可能
クラウド型予約システムはWordPressを利用していなくても利用可能。サービス提供事業者がシステム管理やセキュリティ対策を担ってくれるため、安心して利用できます。
クラウド型予約システムでできることをChoiceRESERVEの基本機能をもとに紹介します。
予約管理機能
予約管理機能とは、予約を自動で受け付け、リアルタイムで空き枠の管理を行う機能です。空き枠が予約で埋まると自動的に予約受付を停止し、キャンセルで空き枠がでると自動的に予約受付を再開します。
通知・リマインダー機能
通知・リマインダー機能は、メールなどで予約者や管理者に予約内容を通知する機能です。予約時に予約日時を通知することに加え、予約日が近づくと予約確認通知を自動で配信します。
顧客管理機能
顧客管理機能とは、予約時に取得した氏名・メールアドレス・電話番号などの予約者情報を蓄積・管理する機能です。
予約時に情報を取得できても、顧客情報として蓄積されないシステムもあります。予約管理システムで顧客情報を管理したい場合は、導入前に確認するとよいでしょう。
決済機能
決済機能は、予約料金を事前に支払える仕組みです。オンラインで完結するものとして、主にクレジットカードなどが利用されます。事前支払いを導入することで、当日の会計作業が減り、スタッフは受付やサービスに専念できます。
外部システムとの連携
予約管理システムには外部のシステムと連携できるものもあります。外部連携により、データ入力の手間が削減され、必要なデータを効率よく活用することが可能です。
例えば、自社が保有する会員データと連携すると、予約者は予約画面で自分の情報を入力することなく、予約を完了できます。
複数拠点管理
複数拠点の予約データや顧客情報を一括で把握することが可能です。管理者ごとに閲覧・編集範囲を細かく設定したり、スタッフごとの権限設定もできます。
WordPressに埋め込めるクラウド型予約システム
以下では、WordPressに埋め込めるクラウド型予約システムを紹介します。WordPressで制作した自社サイトへ実際に埋め込む際の手順が書かれた、各サービスのガイドページへのリンクも掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください。
Airリザーブ(エアリザーブ)
株式会社リクルートが提供している無料の予約システム作成ツール。自社ホームページとの連携に対応しているので、WordPressで作成したサイトへのカレンダー設定が可能です。
予約情報を一元管理できて、24時間の受付により予約の取りこぼしをカバー。予約枠は、顧客が時間を選ぶ「自由受付」と店舗が事前に予約枠を設定できる「事前設定」から選択可能です。
▼埋め込み方法はこちらからご確認ください
https://faq.airreserve.net/hc/ja/articles/203693229
SELECTTYPE(セレクトタイプ)
株式会社セレクトタイプが運営する予約システム。タグを使ってWordPressに予約カレンダーへの埋め込みが可能です。
イベントタイプをはじめ、営業時間受付タイプ、スタッフ指名タイプ、宿泊施設タイプと、業種ごとに適したテンプレートを用意。予約状況はカレンダーで簡単に管理できます。
▼埋め込み方法はこちらからご確認ください
https://select-type.com/blog/help/how-to-embed-yoyaku-form/
RESERVA(レゼルバ)
株式会社コントロールテクノロジーが提供する予約システム。WordPressで作成したホームページへの埋め込みが可能です。
難しいプログラミングやWebデザインのスキルは必要ありません。初心者でも使いやすい予約システムで、パソコンが苦手な方へのサポートもしています。
▼埋め込み方法はこちらからご確認ください
https://support.reserva.be/hc/ja/articles/235660068
オープンソースの予約システムに関するよくある質問
Q:無料で利用できますか?
A:オープンソースソフトウェアは、その名の通りソースコードが公開されており、誰でも利用、改変が可能です。このため、ライセンス費用が発生しないことが大きな特徴であり、導入コストを大幅に抑えることができます。
ただし、多くのソフトウェア自体は無料でも、システムを動かすためのサーバー費用や、ドメイン取得費用、セキュリティ対策費用などは別途発生します。
Q:プログラミングの知識は必要ですか?
A:はい、オープンソースの予約システムを本格的に活用するには、プログラミングの知識が必要です。
まず、デザイン変更や機能追加には、PHPやJavaScriptなどのコーディングスキルが求められます。また、市販のソフトと違い、サーバーの環境構築や設定ファイルの編集といった技術的な作業をすべて自分で行う必要があります。
さらに、ベンダーの公式サポートがほとんどないため、不具合の修正やセキュリティ対策も自己責任です。脆弱性が見つかった際のパッチ適用など、高度な知識と経験がなければ対応が難しく、安心して運用するためには専門的なスキルが不可欠です。
Q:サポートは受けられますか?
A:オープンソースの予約システムは、原則として開発者や提供元による公式なサポートはありません。
これは、オープンソースソフトウェアが「有志による開発」という性質を持っているためです。無料で利用できる代わりに、問題が発生した際の対応は自己責任となります。
以下のような形でサポートを活用することは可能です。
1. コミュニティの活用
多くのオープンソースソフトウェアには、活発な開発者コミュニティが存在します。フォーラムやメーリングリストを通じて、他のユーザーや開発者に質問したり、解決策を探したりすることができます。
2. 有償サポートサービスの利用
一部の企業は、オープンソースソフトウェアに対する有償サポートサービスを提供しています。これは、オープンソースの専門知識を持つ企業が、システムの導入から運用、トラブルシューティングまでをサポートするサービスです。
オープンソースの予約システムは自社の運用に!
予約管理の負担を軽減するのに便利な予約システム。導入にかかるコストが負担になる場合におすすめなのが、無料で利用できるオープンソースの予約システムです。拡張性が高く、自社のニーズに合わせて欲しい機能をカスタマイズできます。
そのほか、WordPressで制作した自社サイトへ埋め込みができるタイプのクラウド型予約システムサービスも便利です。
また、埋め込みをしない予約システムでも、デザインを自社サイトのデザインに合わせることができます。埋め込みができるタイプと比較をしてみるのも良いでしょう。