
- 商品やサービスの提供前に代金を支払う「事前決済」の概要と導入メリットを解説
- オンライン予約システムに事前決済機能を組み合わせ、顧客と店舗双方の利便性を高める方法を提示
- 事前決済の導入効果が高い業種と、自社に最適なシステムを選定するための比較ポイントを紹介
「事前決済」は、店舗と顧客の双方にメリットのある決済方法です。利便性が高く、無断キャンセルの抑止効果もあることから、多くの店舗で導入が進んでいます。
この記事では、事前決済とはどのようなものなのか、メリットや注意点を分かりやすく解説します。事前決済の導入に適した業種と活用例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
事前決済と基本的な決済の流れ
事前決済は、オンラインショッピングや飲食店予約、イベント申し込み、宿泊や交通機関のチケット購入など幅広いシーンで活用されています。事前決済と基本的な流れについて解説します。
事前決済とは?
事前決済とは、商品やサービスの提供を受ける前に、顧客が代金を支払う決済方法のことです。オンラインショッピングで服を買う時や、ホテルをネット予約してその場で支払いを済ませる時など、私たちの日常に広く浸透しています。
対面での現金払いや後払いとは異なり、主にオンライン上でクレジットカード、デビットカード、電子マネー、QRコード決済などを使って行われます。
事前決済と聞くとクレジットカードや電子マネーでのオンライン決済をイメージするケースが多いですが、サービスの提供や商品の発送前に代金を銀行振込で支払う形式も、広い意味で事前決済の一つです。
事前決済の基本的な流れ
基本的な流れは、まず顧客がオンラインストアや予約サイトで商品・サービスを選び、購入・予約手続きへ進みます。次に、クレジットカード情報やPayPayなどの決済手段を選択し、情報を入力して決済は完了です。
決済が正常に完了すると、顧客には購入確認メールが届き、事業者は決済情報を受け取ります。これにより、事業者は代金未回収のリスクなく、スムーズに商品発送やサービス提供の準備を進めることが可能です。顧客は当日の支払いが不要となり、スマートな購入・予約体験が可能になるでしょう。
事前決済が導入されるようになった背景
事前決済が導入されるようになった最も大きな要因の一つが、飲食店や宿泊施設などで深刻化している無断キャンセル(ノーショー)問題です。予約のドタキャンや来店しないことによる食材の廃棄、空きリソースは事業者にとって大きな損失になります。
予約時に料金を確定させる事前決済は、キャンセルによるリスクを大幅に軽減する有効な手段として注目されています。
業務効率化に関する課題
業務効率化も、事前決済が導入されるようになった背景の一つです。導入前は、サービスの提供後または前に、スタッフが現地で現金の受け渡しやキャッシュレス決済を行っていました。その度に、スタッフは会計作業でサービスを中断します。また、顧客ごとの支払い確認や売上管理も手作業が多く、業務に負担がかかっていました。
事前決済を導入することで、会計時の行列解消やレジ締め作業の負担軽減、現金管理の手間削減などが期待できます。
これによりスタッフは、本来のサービス提供に集中できるようになります。
キャッシュレス決済の普及
近年スマートフォン決済や、コロナ禍の非接触決済などによりキャッシュレス決済が普及しています。これにより、予約から決済までをオンライン上で完結させたいというニーズが高まりました。顧客と事業者の双方にメリットのあるシステムとして、事前決済の導入が進んでいます。
またインバウンド(訪日外国人観光客)需要への対応として、キャッシュレス決済に対応する必要性も、事前決済導入を後押ししています。
事前決済の導入による主な5つのメリット
事前決済の導入には、無断キャンセル防止や業務効率化の他にもさまざまなメリットがあります。ここでは、具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
無断キャンセルや直前キャンセルの抑止
事前決済は、無断キャンセルや直前キャンセルへの抑止力になります。予約した顧客がキャンセルの連絡もないまま当日に現れない問題、いわゆる「No show(ノーショー)」対策としても有効です。無断キャンセルのリスクを減らすことは、店舗にとって大きなメリットとなります。
また事前決済であれば、予約時に支払いを完了させているため、直前にキャンセルが発生した場合でも、店舗はキャンセル料を請求する機会があります。弊社「予約ラボ」の調査では、事前決済をしている人はキャンセル料を規定通り支払っている人が約7割に対し、事前決済をしていない人の約3割にとどまりました。
▼参考:
ドタキャン防止、お支払いの手間を削減| ChoiceRESERVE
業務効率化・省力化を実現
事前決済の導入は、業務効率化や省力化につながります。事前に支払いが完了しているため、来店時の会計業務が不要になります。また、レジで金額を打ち込む作業やお金の受け渡しがなくなることで店舗スタッフの負担が軽減され、より丁寧な接客ができるので、サービス品質や顧客満足度の向上も期待できます。
さらに、事前決済は会計ミスの削減にも有効です。利用者が増えてレジでの現金のやり取りが軽減されれば、釣り銭のミスなどのトラブル防止も期待できるでしょう。
行列や混雑の解消と顧客満足度の向上
事前決済を導入することで、行列や混雑の緩和が期待できます。事前に決済が完了していれば、顧客は来店当日に商品やサービスの提供を受けるだけ。会計の手間がかからず、人の流れがスムーズになるため、レジ待ちの行列や店内の混雑が発生しにくくなります。
顧客の中には、レジの行列や店内の混雑を気にする方もいます。「混み合っているから、また次の機会にしよう」と買い物やサービス利用を諦めてしまうケースも少なくありません。事前決済の導入は、このような機会損失を防ぐ対策にもなります。
訪日外国人観光客の需要を取り込み
事前決済の導入は、訪日外国人観光客の取り込みにも有効です。事前決済を利用すれば、日本語に不慣れな外国人観光客でも安心してサービスが受けられます。事前に正確な料金が分かるので、ホテルの予約や体験ツアーなどにも申し込みやすくなるでしょう。
また、店舗のメリットとして、外国語でのコミュニケーションによるトラブルを回避できることが挙げられます。言葉が障壁となって注文に手間取る、会計で揉めてしまう、といったトラブルを防止できます。
事前決済は、外国人観光客の心理的な安心感につながり、売上を伸ばす上でも重要な要素です。
顧客情報の取得と効果的な活用
事前決済は、顧客情報の取得も同時に取得できます。オンラインで予約と事前決済をおこなう際、氏名やメールアドレスなどの顧客情報の登録が必要です。予約内容は自動的に収集、データベース化されるため、顧客情報に紐づいた顧客情報の収集と管理が可能になります。
また、取得した顧客情報はマーケティングへの活用が可能です。例えば、定期的にメールマガジンを配信して顧客とのつながりを維持したり、新商品やキャンペーンの情報を発信して来店を促したりするなど、集客やリピート率の向上を狙った施策を打つことができます。
事前決済を導入する際の重要ポイントと注意点
事前決済を導入する際の大切なポイントや注意点を紹介します。
決済方法の種類と対応範囲を確認する
事前決済を導入する際に必ず確認したいのが、決済方法の種類です。事前決済には、クレジットカード決済のほか、キャリア決済やID決済などさまざまな決済方法があります。代表的な決済方法には以下のようなものがあります。
決済手段 | 概要 | 主な提供会社・サービス例 |
---|---|---|
クレジットカード | カード情報を入力してオンラインで即時決済 | Visa, Mastercard, JCB, American Express, Diners Club など |
デビットカード | 銀行口座から即時引き落とし | Visaデビット、JCBデビット、各金融機関の発行カード |
QRコード決済 | スマホアプリでQRコードを読み取り、もしくはアプリ決済 | PayPay, LINE Pay, d払い, 楽天ペイ, au PAY など |
電子マネー | 事前チャージや紐付けで決済 | Suica, PASMO, 楽天Edy, nanaco, WAON, iD, QUICPay など |
キャリア決済 | 携帯電話料金と合算して支払い | ドコモ払い, auかんたん決済, ソフトバンクまとめて支払い |
オンライン銀行決済 | インターネットバンキングから直接送金 | 各金融機関のネットバンキング(例: 楽天銀行、PayPay銀行など) |
コンビニ決済 | オンライン注文後、発行された番号でコンビニ払い | セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートなど(決済代行経由) |
銀行振込(前払い) | 指定の銀行口座へ事前に代金を振り込む | 各金融機関(三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行など) |
事前決済を導入しても、顧客にとって利用しやすい決済方法がなければ離脱につながる可能性があります。決済方法を幅広く取り揃えることや、自社の顧客ニーズに合った決済方法を導入することが大切です。
例えば、クレジットカード決済は利用者が多くスタンダードな決済方法です。しかしクレジットカード決済に限定すると、クレジットカード保有率が低い10代から20代の顧客が決済できずに取りこぼす可能性があります。
若年層もターゲットとするなら、デビットカードやキャリア決済、コンビニ決済などの導入も視野に入れるといいでしょう。
キャンセルポリシーの明確な設定と運用
事前決済を導入するなら、キャンセルポリシーの設定は不可欠です。キャンセルポリシーとは、予約をキャンセルする場合の注意事項やルールをまとめたものです。キャンセル料が発生するタイミング、キャンセル料の金額、返金方法などを明確に掲載しましょう。
キャンセルポリシーは、予約キャンセルによる損害を最小限に抑えますが、顧客の立場になって検討することが大切です。例えば、予約直後からキャンセル料が発生したり、高額なキャンセル料は、顧客に予約を躊躇させる要因になります。
セキュリティ対策と信頼性の高いサービス選び
事前決済は個人情報や金融情報を扱うため、セキュリティへの考慮は重要です。ログイン時の安全性が確保されているか、情報の暗号化がされているか、十分なモニタリング体制が整備されているかなど、セキュリティへの対策状況をしっかり確認しましょう。
また、内部から情報が漏洩するリスクもあるため、顧客情報を扱うスタッフに情報保護教育をおこない、セキュリティ対策への意識を高めることも重要です。
万が一、顧客情報の流出や不正利用による被害が発生すれば、大きな問題になります。顧客に不安や損害を与えてしまうだけでなく、店舗の信頼も失われてしまいます。
▼参考:
セキュリティへの取り組み| ChoiceRESERVE
自社のニーズに合ったサービス選定
事前決済を導入する際は、自社のニーズに合ったサービスを選択しましょう。クレジットカード会社と直接契約を結ぶ方法もありますが、利便性を重視するなら決済代行サービスを利用する方法もあります。
クレジットカード決済やキャリア決済、コンビニ決済などのさまざまな決済方法を一括で導入できるほか、各クレジットカード会社との契約や入金管理、支払いの督促といった煩雑な業務を代行してもらうことができます。
事前決済のメリットを顧客にアピールする必要がある
顧客に事前決済を利用してもらうためには、メリットをアピールする必要があります。事前決済なら当日の会計が不要になることや、スムーズにサービスを受けられることとなど、顧客にとって利便性の高い決済方法であることを周知しましょう。
また、事前決済の利用者に限定して、割引や特典を提供するのも効果的な方法です。「事前決済の利用で10%割引」など付加価値を付けることで、事前決済の利用促進が期待できます。
事前決済の導入が効果的な業種と活用方法
事前決済は実際にどのような業種で導入されているのでしょうか。各業種における活用例をご紹介します。
ホテル・宿泊施設
ホテルや旅館などの宿泊施設では、事前決済を導入する施設が多くなっています。予約と同時に決済が完了しているため、無断キャンセルや直前キャンセルが発生しにくくなります。
また、現地での会計が不要になることで、チェックアウト時にかかる時間を短縮します。「集中する時間帯にフロントが混み合う」「会計待ちの長い行列ができる」といった問題の解消にもつながるでしょう。
レストラン・飲食店
レストランや飲食店で度々問題となる無断キャンセル。事前決済は、無断キャンセルを防ぐ有効な手段です。万が一、無断キャンセルや直前キャンセルが発生しても、店舗側はキャンセル料を徴収できるため、損害は最小限に抑えられます。
また、事前決済の導入は、インバウンド需要の取り込みにも効果的です。事前に席や料理の予約ができ、現金を使わずに会計を済ませられるため、日本語に不慣れな外国人観光客でも安心して利用できます。
小売業
事前決済の導入は、繁忙期や繁忙時間帯のある小売業にも適しています。具体的には、季節商品を扱うケーキショップや菓子店、イベントショップなどです。事前にWebサイトで注文と支払いを済ませて、店舗では商品を受け取るだけという販売方法が定着すれば、顧客の待ち時間が減り利便性が大きく向上します。
また、当日の会計が不要になることで店舗スタッフの負担も軽減されます。事前決済の導入によって、より丁寧な接客やスムーズな対応ができるようになれば、顧客満足の向上も期待できるでしょう。
美容室・サロン
事前決済は、美容室やエステサロンでも利用されることが多くなっています。予約時に事前決済だけでなく、コース内容の選択やアンケートが可能なシステムを導入している店舗も多いです。美容室やエステサロンでは限られた時間内でサービスを提供しなければならないため、事前に顧客の要望や悩みを把握しておくと、来店当日の対応がスムーズになります。
美容室やエステサロンの特徴として、顧客一人当たりの対応時間が長いことや、客単価が高めであることが挙げられます。無断キャンセルや直前キャンセルが発生すると損失も大きくなりがちなので、事前決済の導入は有益であるといえるでしょう。
各種スクール・レッスン教室
スクールや教室といった分野においても、事前決済を利用して当日の会計が不要になれば、終了後、顧客はすぐに帰宅できます。会計待ちの時間がなくなることで、あまり時間に余裕のない顧客も気軽に受講しやすくなります。
また、スクールやレッスンの受講者は、毎週利用している継続顧客や、体験など1回のみの単発顧客などさまざまです。さらに、コースによって料金が異なる上に、参加人数が多くなるほど料金徴収の手間もかかるため、事前決済が利用できると会計業務の効率化にも役立ちます。
イベント・レジャー
イベントやレジャーを実施する際、事前決済でチケットを購入してもらう仕組みを作れば当日の入場がスムーズになります。入場までの待ち時間が短いことや混雑の回避は、顧客満足度向上につながります。
また、当日に料金を徴収する業務がなくなると、運営側の負担が大きく軽減されます。会計のためにレジや現金の手配をしたり、スタッフを増員したりする必要がなく、運営コストを削減できます。
事前決済システム選びで失敗しないための比較ポイント
多くの事前決済システムがある中で、自社に最適なものを選ぶのは簡単ではありません。この章では、導入後に失敗しないために押さえるべきポイントを解説します。
自社の運用に合った決済方法
「自社の運用に合った決済方法」を選ぶ際は、まず顧客が日常的に利用する決済手段を把握することが重要です。例えば、クレジットカードの所有が少ない若年層にはQRコード決済、幅広い層にはクレジットカード決済を選択できるようにするなどです。
取り扱う商品やサービスの特性も考慮の一つになります。例えば、高額商品なら銀行振込、少額・頻繁な利用なら電子マネーという洗濯もあります。
また、既存の予約システムやPOSレジなど自社システムと連携できるかなど、業務フローに無理なく組み込めるかを確認しておきましょう。
これらの要素を総合的に判断し、顧客利便性と業務効率のバランスが取れた決済方法を選択することが、失敗しないシステム選びに繋がります。
導入費用・月額費用や手数料
事前決済システム導入には、初期費用、月額費用、決済手数料がかかります。初期費用は導入時に一度発生し、無料から高額まで幅があります。月額費用はシステム維持費として毎月発生し、プランや機能で変動します。
最も重要なのは決済手数料で、売上額の数%が決済ごとに発生します。決済方法(カード、QRなど)によって料率が異なるため、自社の主要な決済手段における手数料を事前に確認し、総コストを試算することが重要です。
また、一部のシステムではキャンセルに手数料が発生する場合もあるので、どのような場合に手数料がかかるのか、確認しておきましょう。
入金サイクル・キャッシュフローへの影響
入金サイクルとは、顧客が決済を完了してから、事業者の口座に売上金が振り込まれるまでの期間を指します。決済会社により、最短翌営業日から月1回など様々です。サイクルが短いほど資金繰りが安定し、急な仕入れや投資にも対応しやすくなります。
自社の資金計画と照らし合わせて、最適なサイクルがあるサービスを選びましょう。
サポート体制と緊急時の対応
システム導入後のサポート体制は、トラブルが発生した時に迅速に対応してもらえるか見極めるポイントです。対応時間(24時間365日か、営業時間内か)、対応方法(電話、メール、チャットなど)、サポート範囲(操作方法、トラブルシューティング、返金処理など)などを、事前に確認しましょう。
決済システムは支払いに関わるため、システム障害や不正利用といった緊急事態に迅速に対応してもらえるかは重要です。また、導入後のトレーニングや、FAQ・マニュアルの充実度も、スムーズな運用には欠かせない要素です。
他システムとの連携性
他のシステムと連携できるか、導入前に確認をしましょう。既存の顧客管理システム、POSレジ、会計システム、予約システムなどに連携することで、業務効率アップにつながります。
予約から決済、顧客情報管理、売上計上までを一元的に行えるので、手作業によるデータ入力ミスや二重管理の手間を削減できます。API連携やCSV連携など、連携方法や柔軟性、追加費用を確認しましょう。
事前決済は店舗とお客さまにメリットがある!
この記事では、事前決済とはどのようなものなのか、メリットや導入時の比較ポイントを紹介しました。事前決済には、無断キャンセルの抑止効果や業務効率化など数多くのメリットがあります。顧客の利便性向上にもつながるため、顧客満足度や集客の向上も期待できます。
また、予約時に事前決済を行いたい場合には、決済機能付きの予約システムもあります。
ぜひこの機会に、事前決済の導入を検討してみてはいかがでしょうか。