「電話が鳴りっぱなしだった」「予約枠が埋まり、お断りするしかなかった」など、毎年繁忙期になると、こうした報告が現場から寄せられるケースが多いのではないでしょうか。

なぜ同じ状態が毎年くり返されるのか。業界データを分析すると、繁忙期は規則的な「波」として現れていることが分かります。

本記事では、JATMA(日本自動車タイヤ協会)・国土交通省・Googleトレンドのデータから繁忙期の全体像を整理し、本部が備えておきたい準備のポイントをあわせて確認します。

この記事の3行まとめ
  • タイヤ交換→車検→オイル交換の順で、繁忙期の波は年3回連鎖する
  • 予約のピークは11月と3〜4月に集中し、波が重なる時期の人員計画が鍵になる
  • 予約枠の事前設計・オンライン予約の周知・情報の一元管理で負荷を分散できる

カーメンテナンス事業者が抱える「繁忙期の課題」

繁忙期にカーメンテナンス事業者が直面する課題は、大きく3つに整理できます。

課題 現場の実態
電話+Excel管理による予約漏れ 大量の予約を電話だけで受けていたり、出先で受けた予約の記録を忘れたりして、クレームにつながる
シーズン集中による管理の破綻 冬・春のタイヤ交換シーズンに予約が急増し、受付処理が追いつかなくなる
多拠点の予約一元管理の困難 本部から各店舗振り分けやフランチャイズ加盟店のリアルタイム把握が難しく、機会損失につながる

こうした課題を、現場の努力だけで解消するのは簡単ではありません。まず「繁忙期がいつ、どのように来るのか」をデータで把握することが、対策の第一歩になるでしょう。

繁忙期は年3回の波で来る──データで見る「3連鎖」の構造

カーメンテナンス店舗の繁忙期は、年に主に3つの波で訪れます。

  • 第1波:10〜12月(冬タイヤへの履き替えシーズン)
  • 第2波:3月(車検の年度末集中)
  • 第3波:4〜5月(オイル交換・GW前整備)

第1波:タイヤ交換(10〜12月)|なぜ11月に予約が集中するのか

JATMAが公表する市販用タイヤ販売実績(業界統計)によると、タイヤ販売量は10月前後に最大ピークを迎え、3月にも副次的なピークが見られます。

図1 市販用タイヤ月別販売本数 2022〜2025年(出典:JATMA)

図1 市販用タイヤ月別販売本数 2022〜2025年(出典:JATMA

一方、一般的にタイヤ専門店における予約のピークは、タイヤ販売のピークより1か月遅い11月に訪れます。

「モノが売れる月」と「お店に予約が集中する月」の間には、約1か月の時間差があると考えられます。

需要の3層構造で見る「1か月遅れ」の理由

この時間差を解くヒントが、「タイヤ交換」という言葉の検索の動きです。

図2 タイヤ販売と「タイヤ交換」の検索推移(相対指数) 出典:JATMA市販用タイヤ販売実績(2022〜2025年4年平均)/Googleトレンド「タイヤ交換」(2022〜2025年4年平均)

図2 タイヤ販売と「タイヤ交換」の検索推移(相対指数) 出典:JATMA市販用タイヤ販売実績(2022〜2025年4年平均)/Googleトレンド「タイヤ交換」(2022〜2025年4年平均)

まず10月には、消費者がスタッドレスタイヤを「購入」する段階に入ります。JATMAデータでは10月が年間最大の販売月であり、ここが需要の起点です。
続く11月は、「どこで交換してもらうか」を探す段階です。「タイヤ交換 予約」といった検索が急増し、店舗への電話が鳴り始めるのもこの時期です。
そして11〜12月には、消費者が具体的な予約行動に移ります。電話受付と手書き管理の限界が、この短い期間に一気に表面化するのです。
つまり、10月にタイヤ販売が増え始めたタイミングで「来月(11月)は予約ラッシュが来る」と予測できます。このタイミングでオンライン予約の受付を前倒しで開始し、電話集中を分散させておくことが、最も効果的な対策の一つになると考えられます。

構造 消費者行動
購入(10月) JATMAデータによると10月が年間最大の販売月。消費者がスタッドレスタイヤを「購入」する段階
検索・情報収集(11月) 「どこで交換してもらうか」を探す段階。「タイヤ交換 予約」などの検索が急増します。電話が鳴り始めるのもこの時期。
予約行動(11〜12月) 消費者が具体的な予約行動に移す時期。この短期間に一気予約が集中。

第2波:車検(3月)|年度末集中と制度変更の影響

国土交通省データによると、車検台数は3月が年間最大(約389万台、月平均の約1.4倍)です。

この数字が示す通り、3月は年間で最も車検が集中する繁忙期にあたります。タイヤ交換の波(10〜12月)が落ち着いた直後に訪れるため、現場にとっては連続した負荷になりやすい時期と言えるでしょう。

月別自動車検査台数(2019〜2023年の5年間平均)(出典:国土交通省 令和6年6月25日)

月別自動車検査台数(2019〜2023年の5年間平均)(出典:国土交通省 令和6年6月25日

なお、国土交通省は2025年4月より車検の受検可能期間を「満了日2か月前から」に拡大しています(出典:国土交通省 報道発表資料 令和6年6月25日)。

これにより、今後は3月に集中していた車検需要の一部が1〜2月へ分散する可能性があります。従来の閑散期だった時期が徐々に忙しくなることも見越した体制整備が、今のうちから重要になってきます。

第3波:オイル交換(4〜5月)|検索データが示す「次の波」

Googleトレンドで「オイル交換」の検索推移を確認すると、ピークは車検集中の翌月にあたる4〜5月となっています(2022〜2025年の4年平均)。

「オイル交換」検索指数の月別推移(2022〜2025年の4年平均)(出典:Googleトレンド)

「オイル交換」検索指数の月別推移(2022〜2025年の4年平均)(出典:Googleトレンド

つまりカーメンテナンス店では、タイヤ交換(10〜12月)→車検(3月)→オイル交換(4〜5月)の順に、需要の波が押し寄せます。この「3連鎖」を別々の課題として捉えるのではなく、年間を通じた一つの流れとして人員・体制を計画することが、繁忙期対応のポイントです。

「3〜4月」に複数の波が重なる地域も

3月は車検の繁忙期であると同時に、地域によっては夏タイヤへの交換シーズンとも重なります。

夏タイヤへの交換は「最低気温が1週間ほど連続して7℃を上回る頃」が目安とされており、関東・関西エリアではおおむね3月下旬〜4月上旬がその時期にあたると言われています。

つまりこれらの地域では、車検の繁忙期(3月)と春のタイヤ交換シーズン(3月下旬〜4月上旬)が近接し、複数の波が重なりやすいタイミングです。

一方、北海道や東北など積雪の多い地域では、夏タイヤへの交換時期は4月中旬〜下旬とやや遅く、車検の繁忙期(3月)とは重なりにくい傾向があります。

年間の繁忙期をどう乗り越えるか

3つの波が連鎖してやってくることが分かれば、対策も前倒しで計画できます。現場の対応力だけに頼るのではなく、経営者や店舗責任者が中心となって早めに準備を進めることがポイントです。

具体的には、9月中旬〜10月に冬タイヤシーズンの予約枠を事前公開し、早期予約特典(割引・無料点検など)で計画的に動くことで顧客の取り込みが期待できるでしょう

10月下旬〜11月にはオンライン予約の周知を強化し、「11月の混雑前に予約を」と呼びかけます。
そして12月〜1月には直前キャンセル枠を管理しながら、翌春(3月)の履き替え予約の先行受付を開始するなどです。

STEP 時期の目安 やること
STEP 1 9月中旬〜10月 冬タイヤシーズンの予約枠を事前公開。早期予約特典(割引・無料点検など)で計画派を取り込む。
STEP 2 10月〜11月 オンライン予約を周知強化。「11月の混雑前に予約を」と訴求。
STEP 3 12月〜1月 直前キャンセル枠の管理と、翌春(3月)の履き替え予約の先行受付を開始。

複数店舗運営なら「予約の平準化」も選択肢に

複数店舗を運営している場合、一店舗に予約が集中している一方で別の店舗には空きが生じてしまうこともあります。

各店舗の予約状況を一元管理し、混雑店舗から近隣の空き枠のある店舗へ顧客を誘導する「予約の平準化」により、機会損失を抑えながら対応ミスのリスクも低減できます。

ChoiceRESERVEのような予約管理システムで複数店舗の予約状況を一つの画面で把握し、平準化の判断をしやすくすることも、繁忙期対応を仕組み化する方法の一つです。

繁忙期の「3連鎖」に経営主導で備えるために

カーメンテナンス業界の繁忙期は、タイヤ交換(10〜12月)→車検(3月)→オイル交換(4〜5月)という「3連鎖」で訪れます。

JATMAデータによれば、タイヤ販売のピークは10月、副次的なピークは3月ですが、3月の春ピークは気象条件によって大きく変動する点に留意が必要です。

さらに、2025年4月施行の車検受検期間拡大により、今後1〜2月の需要が増える可能性もあり、早めの体制整備が求められます。早期予約受付・オンライン予約の整備・多拠点一元管理という3つの打ち手が、繁忙期対策の実践的な柱になると考えられます。